長野五輪で日本中が浮かれまくっていた’98年のこと。
オリンピックCMで流れていた『みんな、みんな、がんばれ』 というフレーズを、今も記憶しておられる方は多いと思います。
実はあの声の主、私の友人だったんですね。
声優をしていたその彼女
メディア関係者にいつでも手渡せるよう、 売り込み用のデモCDをバッグに忍ばせていたのですが
ドライブしてる時に流していた曲に飽きがきて『 ちょっとそれ貸して』 と彼女から召し上げデッキに飲み込ませた瞬間、 背筋がゾワっとしたのです。
スピーカーから聴こえてきたのは十数人の声色。
『これ、ほんまに全部お前さんの声なんか⁈ やっぱりプロっちゅうのは凄いのぅ』
そんな20年以上も前の出来事を、 今回ご縁から入手させて頂いた福山ひでみさんの【声で描くもの" 語り"』を拝聴して思い出しました。
あの時、彼女のデモCDを聴いた時に受けたのと同じ衝撃。
登場する複数の人物。
老若男女の声を、ごく自然に肩の力を抜いて
たったひとりで、演じるというより成り切っておられる。
その情景までが鮮明に広がってくるだけでなく、 そこにある匂いや風まで感じられたんですね。
しかも驚いたことに
福山ひでみさんは声優ではなくアナウンサー。
いやはや
この世には涼しい顔をしながら、 とんでもないことをやってのける人がいるもんだ。
きっと涼しい顔なんてしていられないぐらいの努力を重ねた末に体 得されたのだろうけど
聴く人にそれを感じさせないところが仙人・名人・達人・ 匠などと呼ばれる方々の共通点なのでしょうね。