ステアリングオフセットの謎。
オフセット。
わかりやすく言うと、ズレて設置されている。
W140に限らずメルセデスに乗ると、勘のいい人はすぐ違和感に気付きます。
ん?ハンドルと運転席の中心が合ってないぞ?って。
右ハンドルなら左へ(W140)
左ハンドルなら右へ(W221)
それぞれクルマの中央に向かって、ステアリングが(目測で)2~3cmズレているのがわかりますよね。
いったい何故なんでしょうか。
カタログに謳ってもいなければ、セールスの方々に尋ねても
これまでハッキリとした回答を得られたことはありません。
結果
乗降がし易い、つまり緊急時にすぐ乗り込めたり逃げ出せたりするため。
とか
ドライバーの視点を常にクルマの中央へ意識させるという点で人間工学的に優れているから。
とか
構造上、ステアリングシャフトを曲げたくないから。
などなど
ネット上でも様々な憶測が飛び交い、もはや都市伝説の域に達しています。
実はこのズレ。
メルセデスに限ったことではなく、他のメーカーでもハンドルの左右問わず
ズレてる車種が少なからず存在しているんですね。
そして、気のせいかもしれませんが
何故かハンドルのズレてるクルマは、ことごとく「回頭性」「旋回性」に優れています。
ようするに小回りが利く。
メルセデスで最大級となるSクラスでさえも、ほとんどの道路をあっさりと、そりゃもう拍子抜けするくらいに一発でUターンできてしまうのですね。
もしかするとこれが彼らの狙いなんじゃないか、なんて素人なりに考えてみました。
ステアリングギアの起点が中心に近ければ近いほど「可動域」つまり動かせる糊代が増えますし
起伏点までの距離が短ければ短いほどシャフトの「剛性」は高まる理屈です。
この僅か数cmのズレが、小回りとスタビリティの性能を高くしてくれてるんじゃないのかなぁ、と(あくまで推測なんですが)
いずれにしろ、この謎は私の「機会があれば設計者さんにぶつけてみたい質問」の第1位に20年間ぐらい君臨し続けているわけで。
でも、写真を見るにつけ
「小回りが利く上に乗降性が良くなって視点がセンターを意識できてメカニズム的にも負荷が少なくなるんだからイイコトだらけじゃないか。
多少のズレなんて操作性には全く影響しないんだし、細かいことをいちいち気にしなさんな」
と彼らの主張が聞こえてくるような、そんな気がしませんか?
ま、それもこれも航空機のようにフライ・バイ・ワイヤー(電線を利用した信号伝達)方式になれば、過去の遺物となるのでしょう。
あ…自動運転の時代がきたらハンドルそのものが無くなるんだっけ(笑)
ま、それはともかくとしてメルセデスは
「人も会社もハンドルも、少しズレてるくらいの方が丁度いいんだぞ」と教えてくれているのかもしれませんね。
あなたの人生のハンドル、正しくほどほどにズレてますか?