テールレンズに刻まれている凸凹。
W140に限らず、この世代までのメルセデスはクラスに関係なく
どれもこれもテールレンズを凸凹させていました。
理由は泥や雪なんかに覆われても、どこかの面はちゃんと光っていられるから。
もちろんそれは後続車からの視認性を確保することで、より安全性を高める狙いがあったというわけですね。
しかし、この世代を皮切りにメルセデスのテールレンズにつけられた凸凹は
徐々に薄く浅くなっていき、ついには殆どのモデルから無くなってしまいました。
高照度のLEDランプを奢ったことで解決できると踏んだのか
はたまたダサいだの野暮ったいだのと言われるのが我慢ならなかったのか、それは定かではありませんが
テールレンズだけでなく、ドデカいヘッドライト、ぶっとくてそそり立った柱、大径ハンドル、地味なメーター、ジグザグパターンのシフトレバー…
少なくとも、かつてのメルセデスデザインの多くは
実に武骨的で、無機質的で、お世辞にもドレッシーと評せるものではありませんでしたが
それまで非難していた野次馬たちが実物を目の当たりにして、ことごとく沈黙させられてしまうといった魔力と
そして乗った者でしか味わうことのできない「正義」という力があったのです。
正義とは、必ずしも未来永劫に非ず。
このテールレンズを見るたび、一抹の寂しさが胸に去来するのは私だけでしょうか。