コーヒー、コーラ、ウーロン茶。
純真な白い肚の中を、少しでも黒くしたいから、などと嘯きながら
基本的に黒い液体しか飲んでいなかった頃の話。
ある朝、出張先で目覚めたホテルは多くの問題を抱えていました。
決して少なくはない部屋数の割にエレベーターが1基しかありません。
しかもフロントのある3Fに自動停止するもんだから
混み合う時間帯は阿鼻叫喚の絵図となります。
おまけに自販機コーナーは2Fときたもんで
部屋を出る
↓
エレベーターを待つ
↓
待つ
↓
待つ
↓
ようやく来る
↓
乗る
↓
3Fで自動停止する
↓
動く
↓
2Fに着く
↓
降りて自販機に向かう
↓
ドアは閉まる
↓
自販機から戻る
↓
エレベーターは来ない
↓
待つ
↓
待つ
↓
3Fで自動停止する
↓
待つ
↓
来た
↓
と思ったら1Fまでスルーされる
↓
ひたすら待つ
↓
やっと来た
↓
乗る
↓
3Fで自動停止する
↓
動く頃には朦朧としている
↓
そしてようやく自室フロアに着く。
1度この長旅を経験すると、ちゃんと2回目以降は自販機まで行きたくなくなるように出来ています。
だからここんちに泊まる時は、コンビニなんなで事前に調達するのですが
そもそもずっと避け続けてきたホテルだったので、そんなことすっかり忘れてました。
『今朝は好きなコーヒーもコーラもウーロン茶も諦めざるを得ないな』
無論、ゲストに不便な思いをさせても平気でいられるホテルですから
ミネラルウォーターのサービスボトルなんてあるはずもなく。
仕方なく、部屋の棚にある
見るからに安っぽくて、いったいいつから置いてあるのかも分からないような紅茶に手を出すこととなりました。
飲めるのかどうかも怪しい水道水をポットで沸かし、ひたすら待ちます。
やはり遅い
かなり遅い
めっさ遅い。
そういえば
かつて英国空軍のパイロット達は、空に飛び立つ直前に
美味い紅茶を飲むためには
ポットに火を近づけるのか、それとも火をポットに近づけるのか
なんてことを談笑しながら紅茶を飲み干し、死地に赴いていったといいます。
昔も今も、気品と気位に満ちた男が求められているこの世界の片隅で
イライラしてはいけないな、などと考えながら
ティファールなら10回は沸騰してるくらいのタイミングで、ようやくお湯が沸きました。
久しぶりに朝から紅茶を飲んでみる。
お。
うん。
やるじゃないか、紅茶。
もしかしたらこれも
紅茶が美味しく飲める方法のひとつなのかもしれません。